ビンテージ靴を大解剖。
こんにちは、桜木です。
皆さん、英国紳士靴の両雄と言えばどのブランドを思い浮かべますか。
恐らくトップブランドならJOHN LOBBとEDWARD GREENで異論はないと思いますが、では庶民の味方なら……
私はCHURCH'SとCrockett&Jonesじゃないかな、と思います。
今回はそんな2大ブランドのビンテージ靴の細部を見比べていこうと思います。
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2足をざっくり紹介
今回紹介するのはこちらの2足。右足がチャーチ、左足がクロケットアンドジョーンズです。
チャーチはロゴが薄くなっていますが都市なしのペア、クロケットアンドジョーンズも旧旧ロゴと年季が入っています。どちらも内羽根です。後ろ姿。チャーチはもうバーウッドでお馴染みのスタイルですね。大変チャーチらしい後ろ姿です。クロケットアンドジョーンズはドッグテールのイメージが強いですが、どことなくフレンチな仕上げになっています。どちらも光る良い革ですが、質感は固め。柔らかくもちもちした革の靴はもう少し後の時代の方が多くみられ、必ずしも古ければ柔らかいわけではありません。艶は控えめですが、磨けばちゃんと返事してくれる渋い革です。
チャーチのディテール
旧チャーチの名ラスト、73ラストを採用しており、現在でも通用する端正な英国靴です。モデル名は不明ですが、チェットウィンドでしょうか。
※全ての画像はクリックで拡大できます。アッパーは細かいシボ革。シワの入りからわかるように結構硬めの革ですが、クリーム仕上げで上品に光ります。ステッチはピッチが細かく、丁寧な作りであることが窺えます。
シンプルな英国調ショートウイング。モデル名はわかりませんが、チェットウインドとよく似たスタイルです。
ライニングはヒールのみ革張りで、前半分はキャンバス生地となっています。キャンバスを採用する良さとして通気性が挙げられますが、汗などを吸うため匂いがつきやすいデメリットもあるのではないかと思います。
ライニングは滑らかなカーフ素材。舌革は留められておらず、垂れているのはそういう仕様になっています。
舌革は薄く漉かれたアッパーに、ひとまわり小さい滑革で補強しています。現行ではあまり見られない仕上げです。
ロゴは都市なしチャーチの中でも古めのセリフ体ロゴのもので、60年代初頭までの製造と期待できます。
ロゴは都市なしチャーチの中でも古めのセリフ体ロゴのもので、60年代初頭までの製造と期待できます。
ビンテージチャーチならではの流暢な筆記体。ラストは73で、当時から定番ラストとして採用されていたことが窺えます。
ヒールは全周釘打ちです。
甲が高く、全体的に絞りのないシルエット。この腰高な感じはビンテージオールデンのウルトラワイド(EEウィズなど)に通じるところがあります。
ライニングはチャーチと同じくヒールのみ革張りで、前半分はキャンバス生地となっています。近年のクロケットでは布ライニングは基本的に見られませんが、60年ごろの英国靴では一般的な仕様だったようです。
ライニングはぬめりのあるカーフ素材。舌革は留められておらず垂れています。このあたりもチャーチと同じですね。
ヒールは全周釘打ちです。
ソールにはゴシックでCHURCH'Sの刻印と、輪を描くように“SUBSTANDARD”の表記。つまりB級品と思われますが、Sスタンプですらこれほどおしゃれなあたりこだわりを感じます。左右にサイズ表記とウィズの刻印が入るのは現在まで続くチャーチの伝統ですね。釘は長方形の大きなもので、大型の釘がぐるっとヒールを取り囲むディテールは60年代の靴ならではです。
クロケットのディテール
トゥが大きく、ぽてっとしたフォルムのペア。特に指の付け根からトゥにかけて横幅が広がっており、40~50年代の英国靴ではこのシルエットが良くみられます。お世辞にもかっこいいとは言えませんが、当時の空気感を今に伝える生き証人という意味ではたいへん貴重な存在です。
アッパーはスムースカーフですが、硬めで若干ざらつきがあります。もちもちした革とは異なりますが、クリーム磨きでじんわり光る上品な革です。ステッチのピッチは非常に短く、丁寧な仕上げです。甲が高く、全体的に絞りのないシルエット。この腰高な感じはビンテージオールデンのウルトラワイド(EEウィズなど)に通じるところがあります。
ライニングはチャーチと同じくヒールのみ革張りで、前半分はキャンバス生地となっています。近年のクロケットでは布ライニングは基本的に見られませんが、60年ごろの英国靴では一般的な仕様だったようです。
ライニングはぬめりのあるカーフ素材。舌革は留められておらず垂れています。このあたりもチャーチと同じですね。
ソールにはブランド表記とNORTHAMPTONの産地表記。ENGLANDで無いあたり、世界展開はまだ意識していないようです。M213はラスト番号と思われます。釘は長方形の大きなもので、大型の釘がぐるっとヒールを取り囲むディテールは60年代の靴ならではです。
むすび
いかがでしたか。
都市なしチャーチと旧旧ロゴクロケットのディテールを比較してみましたが、たいへんよく似ていることが分かるかと思います。米靴ではフローシャイムなどがディテールから製造年を推定できるブランドとして知られていますが、時代ごとの靴の作り方の流行というのは英国靴でもあるのでしょう。
クロケットアンドジョーンズはロゴ変更の年代が定かでないのですが、このように他の英国靴と比較することで推定するのも楽しいですね。
ともあれ、ビンテージ靴は細部までこだわりが詰まっており、眺めていて飽きません。
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