【重伝建】
北野町山本通


文明開化の音がする?



北野町は六甲山麓の南斜面に位置しており、眼下には神戸の港町が広がります。明治から大正にかけて多くの外国人が移住したことから、現在も当時の洋館が多数残されています。洋風建築と和風建築とが隣り合う、エキゾチックな街並みを楽しむことができます。


神戸港は1868年1月1日に海外へと門戸を開いた、開港五港のひとつ。江戸幕府は1858年、アメリカとの間で日米修好通商条約を締結します。この条約によって函館、新潟、神奈川、兵庫、長崎の五港の開港が取り決められ、開港場には居留地を設けて外国人を居住させることと定められました。

現在の三宮駅南側には神戸外国人居留地が設けられ、東西・南北方向の街道によって整理されたその区画割は今でもそのまま残されています。居留地の西隣には中華街がありますが、これも居留地へ移住した清国人の影響によるものです。

外国人は原則として居留地内に住むこととされていましたが、明治政府は「兵庫港並大坂に於て外國人居留地を定むる取極」において、居留地が手狭となった場合には居留地外でも外国人が日本人から土地や家屋を借りることを認めていました。この取決めで指定された地域は「雑居地」と呼ばれ、土地の売買は禁止されていましたが、外国人が日本人から買った家屋を取り壊し、新しく建て直すことは認められていました。

殊に北野町・山本通のある山手地区周辺は、緩やかな南斜面の見晴らしのよい住宅地として早くから外国人たちに注目され、明治20年代から本格的な外国人住宅地として発展してきました。彼らが新築した洋風建築は異人館と呼ばれ、北野町の構成的な景観を構成しています。




重要文化財に指定されている旧トーマス住宅
立派な異人館が並ぶ北野町。16館程の公開異人館もあり、往年の異国人の生活を垣間見ることができます。中でも最も有名であろうものが旧トーマス住宅。重要文化財に指定されており、風見鶏の館の愛称で親しまれています。
重要文化財、旧シャープ住宅
旧トーマス住宅の隣にあるのが旧シャープ住宅。こちらも重要文化財で、萌黄の館の愛称で知られています。この両館の前は広場になっており、狭い小径や坂の多い北野町における観光の拠点となっています。
神戸市が所有している旧ドレウェル邸。ラインの館の愛称が付いています。無料公開されており、市所有とあって商売っ気も薄く、落ち着いて内部を鑑賞することができます。
ラインの館の内部。後年の改修で結構手を加えられているようで、文化財というよりはレトロな雰囲気を楽しむための施設といったところでしょうか。



景観形成道路のひとつ、北野通
北野町はその成立から、外国人が買い取った日本建築の一部を洋館に建て替えたものですので、洋館が連続する街並みというのはあまりありません。どちらかといえば、単独で立派な洋館がまばらにある、といった感じです。
そんな中でもいくつかの道路は景観形成道路に指定されており、雰囲気の醸成に一役買っています。
景観形成道路、北野通に並ぶ異人館。北野通には多数の異人館があり、神戸随一の観光地となっています。その性質上、多くの建物が高級飲食店や博物館などで活用されており、多数の観光客や呼子が道路に溢れるなど、ゆっくり散策をするには向きません。また、この辺りはハチが多く飛んでいるので注意が必要です。
こちらも景観形成道路である山本通。高く積まれた石垣の上に洋館が並ぶさまは、坂の町・神戸を象徴するような眺めです。
山本通に沿って立ち並ぶ異人館。こちらは人通りも少なく、ゆったりと眺めることができます。
景観形成小径に指定されている石畳の小径。北野町は明治時代からの地割がそのまま受け継がれたところも多く、このような自動車の通れない小径が残されています。中にはこのような小径でしかアクセスできない異人館も存在します。



重伝建地区の中心は、北野町の由来にもなった北野天満神社が鎮座しています。北野町は雑居地ではありますが、もともと日本人が生活していた場所だけあって、日本古来の文化も共存しています。
北野町の魅力は和洋折衷な街であること。立派な異人館も見事ですが、大規模な和風建築もまた伝統的建造物として指定されています。こちらは地区の東側に位置している浄福寺で、和風建築物のひとつです。
結婚式場として活用されている北野ハンター迎賓館(一般非公開)も和風建築物のひとつ。入口の建物は後年に建てられたものですが、その奥には立派な和風建築が広がっています。




アクセス
各線新神戸駅より南西へ徒歩10分ほど。
各線三宮駅から北へ徒歩15分ほど(登り坂)。
新神戸・三宮の両駅より、神姫バス シティーループに乗車、北野異人館 停留所下車すぐ。



出典
Blue Signal vol.123,2009年3月
神戸市北野町山本通重要伝統建造物群保存地区
https://www.city.kobe.lg.jp/a21651/kanko/bunka/bunkashisetsu/foreigner/sub5/index.html







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