【銘靴図鑑】Trickers
190th Tramping Boot


英国製にこだわりぬかれた逸品です。


2019年に創業190周年を迎えたトリッカーズ。
190年前の1829年というと日本はまだ江戸時代ですので、その歴史の長さには驚かされます。

そんな190周年を記念して、アニバーサリーモデルが190足限定で販売されました。今回はそのペアを紹介しようと思います。
世界で190足限定ですが、日本には40足ほど入ってきたようで、だいたい1/4が日本国内にある計算に。ついでに言うと、うち12足が阪急メンズ大阪で販売されたようです。すごいなメンズ館。


モデルは“TRAMPING BOOTS”。つまりはトレッキングブーツのことで、大変トリッカーズらしいチョイスです。このブーツは1926年当時のラストをもとに作られた復刻靴らしく、アニバーサリーでも派手なことはせず原点回帰を出してくるあたり、靴造りにかけるプライドを感じ取れるところです。デザイナーじゃなくて職人なのよって感じ。
品番はM8102で、ブラックとブラウンの2色展開です。



ラシカルなディテール

本作のために新たに作成された“190ラスト”。1926年当時のラストをもとに、英国のSpring Line社へ依頼して開発されたそうです。トレーディングポストのブログに当時のカタログが載せられていますが(参考)、その雰囲気がよく再現されていると思います。
トゥは先芯がなく、柔らかい仕上がり。Bigenなどで“スリッパのような柔らかさ”と評される所以かと思います。先芯のない靴はトリッカーズでも60年代頃までは散見される仕上げで、これだけでも十分にクラシカルな雰囲気です。
芯がない分ヴァンプは低く抑えられていて、全体的にボリュームは控えめ。ソールはダブルで安定感はありますが、アッパーはすっきりと纏まっています。
トレッキングにはもちろんですが、タウンユースでも使い勝手がよさそうですね。



“英国製”にこだわった素材選び

このモデルの大きな売りが、“純イングランドメイド”ということ。ラストを英国のSpring Line社へ依頼したというのは先述の通りですが、他の素材もイングランドメイドに拘って選ばれています。
例えばこのアッパーは、1826年にノーサンプトンで創業した最古のタナリーであるピッターズ社のクルーザーを採用。クルーザーは高級馬具などで使用されるベジタブルタンニンレザーとのことです。
ワイルドなシボ感と柔らかさが特徴のこの素材、ディアスキンにそっくりです。試しにオールドチャーチの“DEER SKIN”と並べてみました。
どうでしょう、シボ感や皺の入りが似ていると思いいませんか?
ディアスキンをはじめ、水牛などの独特なシボの入るエキゾチックレザーは近年の靴ではあまり見かけないため、この素材ひとつをとってもずいぶんとクラシックな印象を受けます。
ソールにはJ&FJ Baker社のオーク樹皮なめし革を採用。上質なソール材を使っても、トリッカーズらしい大胆なオープンチャネルは健在です。
ソールは190周年の特別なスタンプが押されています。外履きすればすぐに削れてしまう位置なので、履き下ろすには勇気が必要ですね。
これらの英国タンナーの素材を、トリッカーズの職人が縫い上げたのかこのモデル。
やはりアニバーサリーともなれば意気込みも違うようで、気合の入りようがステッチのピッチにも表れています。こんなに細かいトリッカーズ、なかなかないですよ。



属品

限定品とあって、付属物も充実。
1足1足に付属しているシリアルナンバー。職人のサインまで入っています。このペアはNo.22なので結構若番ですね。
こちらはおそらく、アニバーサリーモデル誕生の逸話を書いた冊子。
こちらも裏面にはサインが入っています。



すび

そんなわけで絵になりすぎるアニバーサリーモデル。
あまりにも絵になるので、我が家の靴棚の一角でも長く展示されていました。
こんな感じ
私はこういう限定品にはあまり手を出さないタイプなのですが、ひとつあると棚がにぎやかになってよいですね。




出典
Trading Post
https://tradingpost.jp/aoyama/40657/

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